副業の固定資産の減価償却 — 10万円以上の備品の経費化
副業で購入した10万円以上のパソコン・カメラ・デスクなどの固定資産の減価償却を解説。耐用年数表、定額法・定率法の選び方、青色申告の30万円未満特例まで実例つきで整理します。
副業で10万円以上の備品を購入すると、その年に全額を経費にできず、複数年にわたって分割で経費化します。これが「減価償却」です。
ただし青色申告者には特例があり、30万円未満なら一括で経費化できます。この差を知らずに高額備品を購入すると、節税効果を取り逃すことがあります。
この記事では、副業者の固定資産減価償却の基本と、青色申告の特例を整理します。
本記事は2026年5月時点の制度をもとに作成しています。最新の規定は国税庁でご確認ください。
結論: 10万円・20万円・30万円のラインを覚える
副業者の備品購入の経費化ルールは、購入金額のラインで決まります。
| 購入金額 | 経費化の方法 |
|---|---|
| 10万円未満 | その年に全額経費 (消耗品費) |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却 (3年で均等償却) または通常の減価償却 |
| 20万円以上30万円未満 | 青色申告なら一括経費化、白色なら通常の減価償却 |
| 30万円以上 | 通常の減価償却 (耐用年数で分割) |
青色申告の30万円未満一括経費化は副業者にとって大きなメリットです。
なぜ減価償却が必要か
10万円以上の備品 (固定資産) を一年で全額経費にすると、その年の所得が大きく圧縮され、税負担が偏ります。実際にはその備品を数年使うため、税務上は「使う期間にわたって少しずつ経費にする」のが原則です。
これが減価償却の基本思想です。
耐用年数の目安
備品ごとの「耐用年数」(国税庁が定める使用想定年数) は以下です。
| 備品 | 耐用年数 |
|---|---|
| パソコン (PC) | 4年 |
| ノートパソコン | 4年 |
| サーバー | 5年 |
| スマートフォン | 10年 (実態は3-4年だが) |
| デジカメ・ビデオカメラ | 5年 |
| 一眼レフカメラ・レンズ | 5年 |
| 業務用デスク | 8年 |
| 業務用椅子 | 8年 |
| 自動車 (普通乗用) | 6年 |
| 自動車 (軽自動車) | 4年 |
| プリンター・複合機 | 5年 |
| エアコン | 6年 |
| 内装工事 | 15年 (建物附属設備) |
詳細は国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」を参照。
減価償却の計算方法
副業者がよく使う計算方法は「定額法」です。
年間償却額 = 取得価額 ÷ 耐用年数
計算例: 18万円のノートPCを購入 (耐用年数4年)
年間償却額 = ¥180,000 ÷ 4年 = ¥45,000
各年の経費計上:
- 1年目: ¥45,000
- 2年目: ¥45,000
- 3年目: ¥45,000
- 4年目: ¥45,000
合計: ¥180,000
ただし1年目は購入月によって日割り計算が必要です。6月に購入した場合は1年目は7ヶ月分の¥45,000 × 7/12 = ¥26,250になります。
月割り計算
1年目の償却額 = 年間償却額 × 使用月数 ÷ 12
例: 8月購入なら8月から12月まで5ヶ月分。 ¥45,000 × 5/12 = ¥18,750
一括償却 (10-20万円の場合)
10万円以上20万円未満の備品は「一括償却資産」として3年で均等償却できます。
年間償却額 = 取得価額 ÷ 3年
計算例: 15万円のPCを購入
年間償却額 = ¥150,000 ÷ 3年 = ¥50,000
各年の経費計上:
- 1年目: ¥50,000
- 2年目: ¥50,000
- 3年目: ¥50,000
一括償却の特徴:
- 月割り計算なし (年単位で均等)
- 通常の減価償却よりシンプル
- 償却資産税の対象外 (固定資産税の節税)
青色申告の30万円未満特例
最大のメリットがこれです。青色申告者は30万円未満の備品を一括経費化できます (年間合計300万円まで)。
計算例: 28万円のPCを青色申告で購入
1年目: ¥280,000を全額経費に計上
通常の減価償却なら4年で¥70,000ずつだったところ、1年目に全額計上できます。所得税の節税効果が前倒しになります。
特例の条件
- 青色申告事業者であること
- 取得価額30万円未満
- 年間合計300万円が上限
申告時の処理
通常の青色申告決算書に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を添付します。会計ソフトでは「少額減価償却資産」として登録すれば自動処理されます。
副業者が買う典型的な備品の処理
副業エンジニアが買うことの多い備品の例を整理します。
MacBook Pro (約30万円)
- 30万円未満なら青色一括経費化が最大効率
- 30万円ピッタリの場合: 詳細は税理士相談 (29万円台にする買い方も)
- 30万円以上: 4年で¥75,000ずつ減価償却
iPhone (約15万円)
- 一括償却 (3年均等) で¥50,000ずつ
- または青色一括経費化で¥150,000を1年で
- 業務用と個人用を分けるか、業務按分するか判断
業務用デスク・椅子セット (約20万円)
- 椅子と机を別々に購入なら個別に判定
- セットで20万円なら一括償却 (3年) 対象
カメラ機材 (本体+レンズで25万円)
- 本体とレンズは別資産として判定
- 各々10万円未満なら消耗品費
- 各々10-20万円なら一括償却
- 青色なら全部一括経費化可能
サーバー機 (約40万円)
- 30万円超なので通常の減価償却
- 耐用年数5年で¥80,000/年
副業按分の考え方
備品を業務専用ではなく業務と個人で兼用する場合、按分が必要です。
業務分の償却額 = 年間償却額 × 業務按分率
例: ¥180,000のPC、業務按分70%、耐用年数4年
業務分の年間償却額 = ¥45,000 × 70% = ¥31,500
按分根拠 (使用時間比 or 機能の業務関連性) を記録しておきます。
売却・廃棄時の処理
固定資産を売却・廃棄した場合は別の処理が必要です。
売却した場合
売却収入 - 帳簿価額 = 売却損益
売却益は事業所得 or 譲渡所得として申告。
廃棄した場合
廃棄時点の帳簿価額を「除却損」として経費計上できます。
除却損 = 帳簿価額 (残存価値)
よくある間違い
1. 10万円超の備品を消耗品費で計上
10万円以上は減価償却対象。消耗品費で一括計上すると修正申告対象になります。
2. 一括償却と通常償却を混同
一括償却 (10-20万円、3年均等) と通常償却 (耐用年数で月割り) は別の制度。会計ソフトで適切に分類する必要があります。
3. 30万円未満一括特例を忘れる
青色申告なのに30万円未満を通常償却している。特例を適用すれば1年で全額経費化できることを知らない。
4. 業務按分を忘れる
100%業務利用と申告しているのに、実際は私用兼用。税務調査でリスク。
5. 売却時の帳簿価額を忘れる
数年使った備品を売却する際、帳簿価額 (残存価値) を知らずに「丸ごと収入」として申告。
よくある質問
Q. 副業の30万円未満特例は事業所得限定?
A. はい、青色申告事業所得者のみ。雑所得の副業者は使えません。事業所得として青色申告できる条件を満たす必要があります。
Q. 自宅のPCを副業に流用する場合は?
A. 「使用開始時の中古価額」で計上できます。新品時の価額から減価相当を引いた価額を取得価額として、残りの耐用年数で減価償却します。
Q. 経費計上した固定資産を売却する際の処理は?
A. 売却収入から帳簿価額 (取得価額 - 累計減価償却額) を引いた差額が売却損益です。会計ソフトで自動計算されます。
Q. 30万円ピッタリのPCを買う場合は?
A. 30万円未満特例の対象外です。実務的には消費税込で30万円未満になるか確認、または29万円台の機種を選ぶか、通常の減価償却 (4年で分割) を受け入れるか判断します。
Q. 業務用ソフトウェアの減価償却は?
A. ソフトウェアは耐用年数5年で減価償却します (一部の業務用ソフトは3年)。サブスクは消耗品費・通信費としてその月の経費。
Q. 副業者が初年度に高額備品を買って赤字になった場合は?
A. 雑所得なら赤字を本業給与と通算できません。事業所得の青色申告なら損益通算可能。副業を本格的にやるなら事業所得 + 青色申告がほぼ必須です。
まとめ
副業の固定資産減価償却は購入金額のラインで判断します。
- 10万円未満: その年に消耗品費
- 10-20万円: 一括償却 (3年均等)
- 20-30万円: 青色なら一括経費化、白色は通常償却
- 30万円以上: 通常の減価償却 (耐用年数で分割)
青色申告事業者なら30万円未満特例で大きな節税効果。副業を本格的にやるなら青色申告一択です。
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本記事は一般的な情報提供です。個別の判断は税理士にご相談ください。